概要

国立研究開発法人海洋研究開発機構(理事長 平 朝彦、以下「JAMSTEC」という。)地震津波海域観測研究開発センターの中野優特任技術研究員、地球情報基盤センターの杉山大祐技術副主任らは、地震計記録のランニングスペクトル(※1)を用いて低周波微動(※2図1)と通常の地震動のシグナルを自動的に高精度で判別する、人工知能(AI)技術を用いた新しい手法(以下「SRSpec-CNN」という。図2)を開発しました。

低周波微動は、プレート境界断層やその近傍で発生するスロー地震(ゆっくり地震、※3)の一つです。従来の低周波微動の検知手法では、通常の地震動も同時に検知してしまうことから、目視によるチェックを行う等して個別に判別する必要がありました。

そこで本研究では、低周波微動と通常の地震動のシグナルの周波数成分と継続時間の違いに着目しました。これらを同時に表現するランニングスペクトル画像を地震動波形から作成し(図3)、震源の物理的性質を表す周波数成分の違いを適切に認識するSRSpec-CNNを開発することで、シグナルを自動的に判別するだけでなく判別精度を向上することにも成功しました(図4)。

SRSpec-CNNを用いて、南海トラフ付近に展開されている地震・津波観測監視システム(※4、以下「DONET」という。図5)の地震計で記録された低周波微動と通常の地震動のシグナルの判別を行った結果、99.5%という高い正解率を達成しました。

AI技術を地震動シグナルの判別に用いた研究はこれまでにも行われていましたが、ほとんどは波形データを直接利用していました。地震動シグナルの判別にランニングスペクトルを用いたのは本研究が初めてであり、さらに新しく開発したオリジナルな手法によってシグナルの周波数成分の違いを認識することによって、地震動シグナルの判別の高精度化に成功しました。

スロー地震の発生はプレート境界における巨大地震発生に向けた歪の蓄積過程と深い関係があると考えられています。本手法によって低周波微動を自動でモニタリングすることにより、プレート境界すべりの多様性と時間変化、そして巨大地震の発生メカニズムと準備過程についての理解が深まると期待されます。

本成果は、米国地震学会(Seismological Society of America)発行の科学誌「Seismological Research Letters」電子版に1月3日付け(日本時間)で掲載されました。

詳細:http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20190116/