奈良先端科学技術大学院大学(学長:横矢直和、奈良県生駒市)先端科学技術研究科 植物発生シグナル研究室の宮島 俊介(みやしま しゅんすけ)助教、中島 敬二(なかじま けいじ)教授、フィンランド Helsinki大学、英 セインズベリー研究所らの国際共同研究グループは、樹木の幹が太くなるなど植物の肥厚(側方成長)の仕組みの中で、肥厚の出発点である前形成層での細胞分裂を活性化するPEAR遺伝子群を世界で初めて発見しました。また、植物はPEAR遺伝子の機能によって、様々な細胞同士の情報のやり取りを統合し、側方成長を駆動する細胞分裂活性を空間的に調節していることも世界で初めて明らかにしました。

 植物の成長は、地上および地下方向へ伸びてゆく「先端成長」と、茎や根などを放射方向(横方向)に肥厚させる「側方成長」に分けられます。この側方成長は、植物の茎や根の維管束組織の中の「前形成層・形成層」と呼ばれる細胞集団が活発に細胞分裂することで木部や師部といった維管束組織を肥大化させ、結果的に茎や根を太らせるプロセスであることが古くから知られていました。しかしながら、この前形成層・形成層の「どこで」、「どのように」細胞分裂が起きるのか、またそれら細胞分裂を制御する仕組みが何であるかは、全く未解明でした。

 宮島助教らの国際共同研究グループは、維管束植物のモデルであるシロイヌナズナ (Arabidopsis thaliana)の若い根の前形成層(根の先端にある形成層)を側方成長のモデル系に用い、まず、側方成長における細胞分裂の空間的な分布を調べました。その結果、前形成層での細胞分裂が、師部細胞とその周囲の細胞群に集中していることを見出しました。

 研究グループは、この側方成長を制御する分子機構を解明するために、師部細胞で特異的に発現するPEAR遺伝子群に着目しました。PEAR遺伝子群は、他の遺伝子群の働きを制御する植物に特有のDOF型転写因子タンパク質をコードしています。実験の結果、PEARタンパク質は、師部細胞で作られたあと、原形質連絡という細胞間を繋ぐトンネルを通って細胞間を移動し、活発に分裂する細胞群に蓄積することを見出しました。次いで、PEAR遺伝子群を多重破壊した変異体(pear変異体)では、前形成層の細胞分裂が起こらず、逆にPEARタンパク質の量を過剰にすると、前形成層に過剰な細胞分裂を引き起こすことを発見しました。さらに、実験を重ねたところ、PEARタンパク質が、植物ホルモンや低分子量RNAを介した細胞間の情報のやり取りを制御し、根の前形成層の細胞分裂を空間的に統御する鍵因子であることを突き止めました。

 本研究は、維管束植物を太らせる側方成長のしくみを分子レベルで解明した世界初の成果です。植物の側方成長を自在に操作する技術の確立を通じ、根菜類をはじめとした農作物の収量増加やバイオマス生産効率の向上など、食糧やエネルギーの安定供給へ貢献も期待されます。

 この研究成果は、英国時間の2019年1月9日 (水) 午後6時 【プレス解禁日時:日本時間平成31年1月10日(木) 午前3時】付で、Natureのオンライン版に発表されました。

詳細:http://www.naist.jp/pressrelease/2019/01/005500.html