発表のポイント

  • 遺伝子の情報読み出しに関わる「ポリコーム群タンパク質」の持つ2つの機能が、神経幹細胞のニューロン産生能が「有る状態」と「無い状態」の決定に関与することを示しました。
  • 本研究は、未だ大きな謎である、幹細胞が特定の細胞のみに分化出来る機構のひとつを明らかにしました。
  • 今後、ポリコーム群タンパク質の制御によって、神経幹細胞におけるニューロン分化能の制御が可能にできれば、将来的に再生医療に貢献することが期待されます。

発表概要

私たちの体を作るさまざまな「幹細胞」は、発生が進むと徐々に分化可能な細胞の種類が少なくなります。たとえば脳を作る「神経幹細胞」は、発生の過程で初めはニューロンに分化できますが、発生後期になるとその能力を失い、グリア細胞のみに分化します。しかしこの「幹細胞の分化能力」がどのように制御されているのかについては未だに多くが謎に包まれています。東京大学大学院工学系研究科の壷井將史大学院生(研究当時)、平林祐介准教授、東京大学大学院薬学系研究科の岸雄介講師、後藤由季子教授らの研究グループは、ポリコーム群タンパク質(PcG)に注目してそのメカニズムの一端を明らかにしました。まず、ニューロン分化期においては、PcGがヒストンユビキチン化という修飾によって「一過的に(可逆的に)」ニューロン関連遺伝子の発現を抑制しており、ニューロン分化誘導シグナルに応答してPcGによる抑制が外れることで、ニューロン関連遺伝子が活性化しニューロンに分化することが示されました。一方グリア分化期では、PcGはヒストンユビキチン化ではなく、PcG自身の凝集化によって「がっちりと(永続的に)」ニューロン関連遺伝子の発現を抑制しているために、ニューロン分化誘導シグナルに応答してPcGによる抑制が外れないため、神経幹細胞はニューロンに分化しないことが示されました。この成果は、再生医療の実現において、幹細胞の分化能を適切に制御することで、目的の細胞に分化させる方法を確立するために重要な知見になることが期待されます。

本研究成果は、日本時間12月18日(火)に米国科学誌Developmental Cellに掲載されます。

詳細:https://www.amed.go.jp/news/release_20181218-01.html