ポイント

  • 明治大学大学院農学研究科環境バイオテクノロジー研究室の小山内崇(准教授)と冨田芙結子(博士前期課程2年)及び株式会社ユーグレナの鈴木健吾執行役員研究開発担当らの研究グループは、微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ、以下「ユーグレナ」)を発酵させると、アミノ酸などの30種類以上の化合物を細胞外に放出することを明らかにしました。
  • 細胞外に放出される化合物のうち、産業に広く使われるグルタミン酸は、発酵時のpHによって生産量が制御されていることが明らかになりました。
  • 今回生産されたアミノ酸はCO2を炭素源として細胞内で合成されており、ユーグレナを用いた環境に優しいアミノ酸生産の可能性が示唆されました。

要旨

明治大学農学部・小山内崇准教授およびユーグレナ社らは発酵条件(暗・嫌気条件))で培養したユーグレナが、細胞外に様々なアミノ酸を放出することを発見しました。特にグルタミン酸に関しては、発酵条件のpHが生産量に大きく影響を与えることを明らかにしました。

アミノ酸はタンパク質を構成する代謝産物として知られており、他にも細胞内の代謝や環境応答に重要な役割を担います。工業的には、薬理機能を利用した薬品への利用をはじめ、呈味(ていみ)成分として食品添加物や、飼料の栄養補助などと幅広い分野で活用が期待されています。特にグルタミン酸は、最も市場規模の大きなアミノ酸の一つで、年間330万トンが発酵法によって生産されています。アミノ酸の主な工業生産方法は発酵法であり、主に使用される生産株は、コリネバクテリウムや、大腸菌、酵母などの生育に糖などの炭素源を必要とする従属栄養生物です。しかし、これらの生物による発酵法では、生産時に使う糖源のコストの割合が大きいため、糖の代替となる炭素源が望まれています。

本研究で使用したユーグレナは、植物と同じように光合成によって増殖します。また、増殖時には温室効果ガスの一つであるCO2を光合成によって吸収するため、ユーグレナをはじめとする微細藻類を使用した物質生産は環境負荷の低減につながると考えられています。
本研究グループでは、光合成によって増殖させたユーグレナを、発酵条件(暗・嫌気条件)下に移行した際に、細胞外にアミノ酸を放出することを発見しました。アミノ酸の生産量は、発酵時に培地の成分であるリン酸水素アンモニウムの濃度を変化させることで変化しました。アミノ酸のうち、グルタミン酸に関しては、発酵条件でのpHによって生産量が制御されていることが分かりました。このように本研究では、ユーグレナの光合成を基盤としたアミノ酸の生産技術を開発しました。今後、光合成生物を利用した物質生産が発展することで、環境問題の一つである温室効果ガス削減に寄与できるなど、持続可能な循環型社会への推進が期待できます。

詳細:https://www.meiji.ac.jp/koho/press/2018/6t5h7p00000tked3.html