プレスリリースより抜粋します。

『理化学研究所(理研)開拓研究本部加藤分子物性研究室の藤山茂樹専任研究員と加藤礼三主任研究員の研究チームは、強い「量子揺らぎ[1]」のために、固体中で電子スピン[2]が動かないにもかかわらず波のような振る舞いを示す「量子スピン液体[3]」相に隣接するスピン秩序相において、電子スピンが分子内で分割された新しいスピン秩序状態を発見しました。

本研究成果は、固体中で秩序化したスピンの大きさはスピン量子数[4]1/2の整数倍になる、という磁性体の基本的な考え方を超えるもので、適切な分子設計と磁性の組み合わせにより、新しい機能性物質を構築できることを示しています。

今回、研究チームは、量子スピン液体となる分子性導体EtMe3Sb[Pd(dmit)2]2の陽イオンに分子修飾を行ったMe4P[Pd(dmit)2]2の基底状態を、核磁気共鳴法[5]を用いて調べました。Me4P[Pd(dmit)2]2は、化学式あたりスピン量子数1/2のスピンが一つずつあり、それらは極低温では単純に上向き・下向きと反平行に整列すると考えられていました。しかし、観測された核磁気共鳴スペクトルから、この物質のスピン秩序は2種類の大きさと向きが異なる複雑な構造を持つことが分かりました。このためには、通常は一体のものとして振る舞うと考えられる量子数1/2の秩序スピンが、分子内で分裂している必要があり、Pd(dmit)2分子の対称性の異なるニつのフロンティア分子軌道[6]が固体中で混ざり合うことに起因すると考えられます。

本研究は、米国物理学会の科学雑誌『Physical Review Letters』オンライン版(4月12日付け:日本時間4月13日)に掲載されます。』

出典:http://www.riken.jp/pr/press/2019/20190413_1/