プレスリリースから抜粋します。

『NIMSと筑波大学は、独・ウルム大学などと共同で、ダイヤモンド結晶中の電子スピンの状態を、光電流検出という電気的な手法で読み出すことに成功しました。従来の手法に比べて単一のスピン状態を室温で容易に検出でき、ナノ空間分解能をもつ磁気センサなど量子センシングデバイスへの応用が期待されます。』

概要

  1. NIMSと筑波大学は、独・ウルム大学などと共同で、ダイヤモンド結晶中の電子スピンの状態を、光電流検出という電気的な手法で読み出すことに成功しました。従来の手法に比べて単一のスピン状態を室温で容易に検出でき、ナノ空間分解能をもつ磁気センサなど量子センシングデバイスへの応用が期待されます。
  2. 物質内部や生体内部の電場、磁場、温度の情報を高感度に検知できる「量子センサ」の開発が活発に行われています。中でも、ダイヤモンド結晶中に極微量含まれる窒素 (N) と隣接する空孔 (V) が組み合わさった欠陥 (NVセンタ) は、電子スピンをナノスケールに閉じ込めることができ、また量子状態の持続時間が長いため、高感度とナノ空間分解能とを併せもつ量子センサへの応用が期待されています。これまでNVセンタのスピン状態読み出しには、レーザ光を照射することでNVセンタから放出される蛍光を検出する手法が用いられてきましたが、数十個に1個しか光子を捕集できないことがセンサ感度のさらなる向上を制限していました。
  3. 今回、研究チームは、高コントラスト化が可能な光電流検出を単一NVセンタで初めて成功しました。ここで光電流検出とは、NVセンタにレーザ光を照射することで発生する電流を検出する方法です。本研究成果では特に、単一NVセンタの光電流マッピング検出を実証しました。この実証に適したダイヤモンド試料は、以下に記すユニークな手法で作製しました。まずダイヤモンド基板上にダイヤモンドの高純度層と窒素を極微量に含むNVセンタ層を傾斜状に積層堆積し、その層断面が表面に現れるように表面精密研磨を行いました。得られたダイヤモンド試料表面の特定の場所において、単一NVセンタがダイヤモンド表面近傍にのみ分布し、下層は10μm以上にわたってNVセンタが存在しない高純度層が存在する領域が形成されました。この領域を用いることで光電流検出による単一NVセンタのマッピングに成功しました。この成果は、量子センシングへの応用にも有力であることを示すものです。
  4. 今回開発した手法は、ダイヤモンド表面に小さな電極を用いるだけでNVセンタのスピン状態を検出できるため、量子センシング、量子情報処理のデバイスの小型化の鍵となると期待されます。
  5. 本研究成果は、物質・材料研究機構 寺地徳之主席研究員、筑波大学 磯谷順一名誉教授らと、ウルム大学 (ドイツ) 、IMEC (Interuniversity Microelectronics Centre, ベルギー) 、ハッセルト大学 (ベルギー) 、ウィーン大学 (オーストリア) などのグループとの共同研究によるものです。本研究は 、JSPS科研費 (15H03980, 26220903, 16H06326) 、JST-CREST (JPMJCR1773) の一環として行われました。
  6. 本研究成果は、Science誌の2019年2月15日発行号 (Vol. 363, Issue 6428) にて掲載されました。

出典:https://www.nims.go.jp/news/press/2019/03/201903220.html