プレスリリースより抜粋します。

発表のポイント

  • 迅速かつ正確な測定が困難な環境試料中のストロンチウム90(90Sr)1)の分析法を開発した
  • 質量分析法2)を用いることにより、少量の試料で、かつ測定までにかかる時間の大幅な短縮と高精度化に成功した
  • 環境中の90Srのデータをより多く蓄積し、福島の環境への影響や、周辺環境から受ける被ばく線量のより的確な評価に役立つことが期待される 

『国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(理事長 平野俊夫。以下「量研」という。)放射線医学総合研究所 福島再生支援本部のサフー サラタ クマール上席研究員とカバシ ノーベルト主任研究員は、質量分析法を用いた環境試料中のストロンチウム90(90Sr)の新たな分析法を開発し、従来の分析法に比べて少量の試料で、短時間で90Srを高精度に測定することに成功しました。

 量研では、福島の住民の不安解消に資することを目的に、住民が将来にわたって周辺環境から受ける被ばく線量について、環境中の放射性セシウム(Cs)だけでなく、90Srやプルトニウム(Pu)放射性核種も含めた動きを加味して評価し、その低減化に焦点を当てて研究を進めてきました。 

 90Srは、放射性ヨウ素131(131I)、放射性CsやPuと同じように人工的に生成された放射性核種です。1950-60年代の大気圏内核兵器実験や原子力施設の事故などにより環境中に放出され、現在、降下物3)、土壌や水に存在しています。

 131Iや放射性Csのような放射性核種は、それぞれ固有のエネルギーを有するガンマ線を放出するため、放射線計測法4)により測定試料に含まれるそれぞれの放射能濃度を測ることができます。一方、90Srは放出する放射線がベータ線のみであるため、その放射能濃度を放射線計測法で測定するには、同じくベータ線を放出し環境中に多く存在する自然放射性核種のカリウム40(40K)を化学処理して測定試料から取り除く必要があります。しかし、環境中の90Sr濃度は非常に低いため、化学処理に時間を要し最終的なデータ取得までに約1カ月以上かかる上に、正確に定量することが困難です。 

 そこで、近年注目されている質量分析法を用いて、従来の90Sr分析法に比べ、約1/10程度の少量の試料で、試料処理から定量までの所要時間が24時間以内と迅速に精度よく測定できる方法を確立しました。この新たな分析手法は、90Srのデータをより多く蓄積し、放射性Cs以外の放射性核種も含めた環境への影響や周辺環境から受ける被ばく線量をより的確に評価することに役立つと期待されます。 

 本研究は福島県放射線医学研究開発事業「放射性物質環境動態調査事業」、および日本学術振興会科学研究費補助金(15F14801)において実施されたもので、分析化学の分野において最も注目を集める科学誌の一つである「Analytical Chemistry」のオンライン版に2019年1月31日に掲載されました。』

出典:http://www.qst.go.jp/information/itemid034-005802.html